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保全とは|5つの種類・TPM・目的・進め方を解説

導入・進め方

保全とは|5つの種類・TPM・目的・進め方を解説

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保全とは|5つの種類・TPM・目的・進め方を解説

この記事の要点

  • 保全とは、設備を使える状態に保ち、故障による生産の停止や損失を防ぐための活動全般を指します。
  • 保全は大きく「維持活動(予防保全・事後保全)」と「改善活動(改良保全・保全予防)」に分かれ、予防保全はさらに時間基準(定期保全)と状態基準(予知保全)に分類されます。
  • TPMは全員参加の生産保全で、現場オペレーターが担う自主保全が中核の一つです。
  • 保全の目的は、設備の稼働率を高め、故障による停止・品質不良・安全リスク・コストを抑えることにあります。
  • どの設備にどの保全を当てるかは工場一律ではなく、設備の重要度ごとに決めるのが現実的です。

保全とは何か

保全とは、設備や機械を「使える状態」に保つための活動全般を指します。日常・定期の点検、清掃、給油・調整、部品交換、修理、異常への対応などがこれに含まれます。設備が計画どおり動き続ければ、生産は安定し、納期・品質・コストのばらつきも小さくなります。

日本産業規格(JIS Z 8141 生産管理用語)では、保全を「故障や劣化に対して、設備を使用可能な状態に維持し、また回復するための活動」として整理しています。ここで押さえたいのは、保全が「壊れてから直す」だけの活動ではないという点です。壊れる前に劣化を管理し、故障そのものを減らす予防的な活動までを含むのが、現在の保全の考え方になります。

「保全」と近い言葉に「保守」があります。保守は主に維持・管理・修理を指し、実務では保全とほぼ同義で使われます。厳密には保全のほうが故障を未然に防ぐ活動まで広く含みますが、現場で両者を明確に区別する実益は大きくありません。設備を対象にした保全は「設備保全」とも呼ばれ、製造業の設備保全をAIで考えるで全体像を扱っています。

保全にはどんな種類があるか

保全は、大きく2つの目的で分類されます。設備を今の状態に保つ「維持活動」と、設備そのものを良くしていく「改善活動」です。JISの整理に沿うと、次の5種類に分かれます。

種類分類内容主に向く設備
予防保全(PM)維持活動故障する前に点検・交換して故障を未然に防ぐ標準的な生産設備
├ 定期保全(TBM)維持活動期間や稼働時間を基準に、周期で点検・交換する劣化が時間で進む設備
└ 予知保全(CBM)維持活動状態を監視し、故障の予兆をとらえて対処する重要設備・停止コスト大
事後保全(BM)維持活動故障してから修理・交換で対応する予備設備・非重要設備
改良保全(CM)改善活動故障しにくいよう設備自体を改善する故障が繰り返す設備
保全予防(MP)改善活動設計・導入段階で保全しやすさを織り込む新規導入・更新設備

予防保全(時間基準・状態基準)

予防保全は、故障が起きる前に点検・部品交換を行い、故障を未然に防ぐ保全です。あらかじめ周期を決めて実施する時間基準保全(TBM、定期保全)と、設備の状態を監視して劣化の傾向から実施時期を決める状態基準保全(CBM)に分かれます。周期を短くしすぎるとまだ使える部品まで交換して過剰保全になり、長すぎると故障を取りこぼします。この周期設計が予防保全の勘所です。詳しくは予防保全と事後保全の使い分けで扱っています。

予知保全

予知保全は、状態基準保全(CBM)を発展させた考え方で、振動・温度・電流などのデータから故障の予兆をとらえ、故障する前の最適なタイミングで計画的に対処します。無駄な交換を減らしつつ突発停止も防げる一方、センサーやデータの仕組みが前提になります。予防保全との違いや導入の進め方は予知保全とはにまとめています。

事後保全

事後保全は、故障が発生してから修理・交換で対応する保全です。一見「保全をしていない」ように見えますが、故障しても生産への影響が小さい設備や、予防にコストをかける価値が低い設備では、事後保全のほうが合理的になります。すべてを予防・予知で守ろうとするとコストが見合わないため、事後保全は戦略として意図的に選ぶ対象です。

改良保全・保全予防

改良保全は、同じ故障を繰り返す設備に対し、部品や構造そのものを改善して故障しにくくする活動です。保全予防は、設備の設計・導入段階から「保全しやすさ」「壊れにくさ」を織り込む考え方で、更新や新規導入のタイミングで効いてきます。この2つは設備を今の状態に戻すのではなく、より良い状態にする改善活動に位置づけられます。

TPM(全員参加の生産保全)とは

TPM(Total Productive Maintenance、全員参加の生産保全)は、保全担当だけでなく、生産・技術・管理を含む全部門が関わってロスをなくしていく活動です。設備効率を最大化し、故障・チョコ停・不良といったロスを減らすことを狙いとします。

TPMは一般に8本柱で体系化されます。個別改善、自主保全、計画保全、教育訓練、初期管理、品質保全、事務間接、安全衛生環境の8つです。このうち現場で入口になりやすいのが「自主保全」です。

自主保全は、設備を操作するオペレーター自身が清掃・給油・増し締め・点検を担い、「自分の設備は自分で守る」状態をつくる活動です。日常の小さな異常に早く気づけるようになり、保全担当は計画保全や重い修理に集中できます。フルセットのTPM導入は中小規模の現場には負荷が大きいため、まず自主保全の考え方だけを取り入れる軽量なアプローチが現実的です。機械保全の基礎と技能継承では、この現場側の保全力をどう育てるかを扱っています。

保全の目的は何か

保全の目的は、設備を安定して動かし、故障がもたらす損失を抑えることにあります。具体的には次の4点に整理できます。

  • 生産性:計画外の停止を減らし、稼働率とスループットを保つ。
  • 品質:設備の劣化に起因する不良の発生を抑える。
  • 安全:故障による事故や災害のリスクを下げる。
  • コスト:突発故障による緊急対応・機会損失・過剰な部品交換を抑える。

保全がどれだけ効いているかは、設備がどれだけ計画どおり動いたかで測れます。稼働率や設備総合効率(OEE)はその代表的な指標で、OEE(設備総合効率)と稼働率で計算方法と実態との乖離を解説しています。

保全はどう進めればよいか

保全の進め方は、指標を決めて現状を測り、設備ごとに戦略を割り当て、記録を回して改善する、という順序が基本です。

まず保全KPIを計測する

保全の質を測る代表的な指標は次の3つです。これらが取れていないと、保全を改善しても良くなったかどうかが分かりません。

KPI 1

MTBF

平均故障間隔

  • 意味故障から次の故障までの平均時間
  • 改善方向長くする
KPI 2

MTTR

平均修理時間

  • 意味故障してから復旧までの平均時間
  • 改善方向短くする
KPI 3

設備稼働率

Availability

  • 意味実稼働時間 ÷ 計画稼働時間
  • 見方推移を追う(水準は設備依存)

多くの現場では、MTBFとMTTRが正確に取れていないことが保全改善の最初のつまずきになります。まずは故障・点検の履歴を残し、月次でこれらを集計する仕組みをつくることが出発点です。

設備ごとに保全戦略を割り当てる

「予防か予知か」を工場全体で一律に決める必要はありません。設備の重要度によって、どの保全を当てるかを分けるほうがコストは最適に近づきます。

  • ボトルネック設備:止まると生産全体が止まるため、予知保全で予兆をとらえる価値が高い。
  • 標準ライン設備:計画的な予防保全で十分守れることが多い。
  • 予備・補助設備:故障しても影響が小さければ事後保全で対応する。
  • 安全・法規制に関わる設備:規制に沿った厳格な予防保全を優先する。

この仕分けには、停止コストと故障頻度で設備を3〜4区分するABC分析の考え方が使えます。生産全体のスループットは、一番能力の低い工程(ボトルネック)で決まります。裏返せば、詰まっていない設備を手厚く守っても全体の生産量は変わりにくいということです。保全の投資は、まずボトルネックとなる設備の停止をなくす方向に寄せるのが、経営数字への効きが大きくなります。

AIの前に「記録とデータ化」を整える

予知保全やAIによる故障予測は、過去の故障・点検・稼働のデータがあって初めて成り立ちます。データが紙や個人の記憶にとどまっている段階で高度な予測に進むと、土台がないまま仕組みだけ入れることになり、成果につながりません。

1
Step 1

保全記録の整備

故障・点検履歴を残し蓄積する

2
Step 2

KPIの見える化

MTBF/MTTR/稼働率を月次で集計

3
Step 3

予防保全の強化

重要設備の点検周期を設計・運用

4
Step 4

重要設備の予知保全

対象を絞って効果を検証

Step 1・2は地味な作業ですが、ここを飛ばすとStep 4の予知保全は土台を欠いたまま進むことになります。順序としては、記録を整えてKPIを見える化し、予防保全で守る設備を固めたうえで、効果の大きい重要設備から予知保全を試すのが堅実です。

よくある質問

Q1. 保全と保守は違うのか

実務ではほぼ同義で使われます。厳密には、保全は故障を未然に防ぐ活動まで含む広い概念で、保守は維持・管理・修理を指すことが多いですが、現場で明確に区別する必要性は高くありません。

Q2. 保全の種類はいくつあるのか

JISの分類では、予防保全・事後保全・改良保全・保全予防の4つが基本で、予防保全を時間基準(定期保全)と状態基準(予知保全)に分けると、実務上は5つの型として捉えられます。

Q3. 予防保全と予知保全は何が違うのか

予防保全のうち、あらかじめ決めた周期で行うのが定期保全、設備の状態を監視して予兆から時期を決めるのが予知保全です。予知保全は状態を見て動く分、無駄な交換を減らせますが、センサーやデータの仕組みが前提になります。

Q4. 中小の現場でもTPMは必要か

フルセットのTPMを導入する必要はありません。まずは自主保全の考え方、つまり現場オペレーターが日常点検で異常に早く気づく体制を取り入れるだけでも、故障の早期発見につながります。

Q5. 全設備を予知保全にできない場合、優先順位はどうつけるか

止まると生産全体が止まるボトルネック設備、停止コストが大きい設備、故障頻度が高い設備の順で優先します。最初から全設備を対象にせず、数台に絞って効果を確かめてから広げるのが現実的です。

Q6. 保全を始めるとき、最初にやるべきことは何か

保全記録の整備です。いつ・どの設備が・なぜ止まったかを残し、MTBF・MTTR・稼働率を集計できる状態にすることが、どの保全戦略を選ぶにも前提になります。


Delight Flowでは、保全記録の整備からKPIの見える化、重要設備の予知保全まで、製造現場のAI活用を段階的に支援しています。自社の設備にどの保全を当てるべきか整理したい場合は、お問い合わせからご相談ください。

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代表取締役 村田 凌

執筆者

村田 凌

株式会社Delight Flow 代表取締役CEO

外資系コンサルティングファームにて金融会社のサイバーセキュリティ戦略構築支援に従事した後、東京大学にてAIの研究に取り組む。現在は工学系研究科博士課程に在籍。国際論文誌、学会誌での受賞歴を持つ。

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