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予知保全とは|予防保全との違い・仕組み・導入手順を保全担当向けに解説

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予知保全とは|予防保全との違い・仕組み・導入手順を保全担当向けに解説

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<!-- 想定ニーズ(ジョブ): 予知保全が何で、予防保全・事後保全と何が違い、自社で始めるとしたら何からどう進めるかを知りたい(保全/DX担当) 満たし方: 用語と違いを表で確定 → 仕組み(センサー/IoT/AI) → メリット/課題 → 「どの設備から当てるか」の判断軸 → 6ステップで、読後に対象設備を選べる状態にする 促すアクション: 自社の「止まると困る設備」を1〜3台書き出し、そこからPoCを設計する。整理が難しければ相談 -->

予知保全とは|予防保全との違い・仕組み・導入手順を保全担当向けに解説

この記事の要点

  • 予知保全とは、センサーで設備の状態を常時監視し、AIで故障の予兆をとらえて壊れる前に手を打つ保全方式です。予防保全(時間で決める)・事後保全(壊れてから直す)との違いは、整備の「きっかけ」が時間でも故障でもなく「予兆」である点にあります。
  • 仕組みは「センサーで測る → IoTで集める → AIで異常を検知する → 保全につなげる」の4段。状態を見て整備するCBM(状態基準保全)を、AIで将来予測まで踏み込ませたものが予知保全です。
  • 効果が出るかどうかは、技術より「どの設備に当てるか」で決まります。全設備ではなく、止まると全体が止まる設備に絞るのが現実解です。
  • AIより先に要るのはデータ収集の体制です。1〜3台にセンサーを付けて半年〜1年ためるところから始めれば、中小規模でも着手できます。

設備が突然止まって生産が丸ごと待たされる。ベテランが「そろそろ危ない」と勘で気づいて事なきを得るが、その勘は引き継げていない。こうした場面に心当たりのある保全・生産技術の担当者に向けて、予知保全の中身と、自社で始めるときの進め方を整理します。

予知保全とは?予防保全・事後保全と何が違うのか

予知保全(Predictive Maintenance、PdM)とは、設備に取り付けたセンサーで温度・振動・電流などの状態を常時監視し、AIで故障の予兆をとらえて、壊れる前の最適なタイミングで整備する保全方式です。学術的な位置づけはJ-STAGE「予知保全のための機械学習」などにまとまっています。

保全のやり方は、大きく事後保全・予防保全・予知保全の3つに分かれます。違いは「何をきっかけに整備するか」の一点です。

保全方式整備のきっかけ代表例向くケース弱み
事後保全(BM)壊れてから故障後に修理・交換止まっても影響が小さい設備突発停止・二次被害が読めない
予防保全(TBM/時間基準保全)一定周期が来たら3ヶ月ごとに部品交換劣化が時間で進む設備まだ使える部品まで替える過剰整備
予知保全(PdM/状態+予測)故障の予兆が出たら振動の変化をAIが検知し計画停止止まると全体が止まる重要設備センサー・AI・データ基盤の初期投資

要するに、事後保全は「壊れたら直す」、予防保全は「念のため定期で替える」、予知保全は「必要になりそうな時だけ替える」という考え方です。予防保全との違いは特に混同されやすいのですが、予防保全がカレンダー(時間)で整備日を決めるのに対し、予知保全は設備そのものの状態と将来予測で決めます。予防保全の詳しい進め方は予防保全とはで、保全全体の位置づけは設備保全の基礎で扱っています。

コスト最適化の理屈では予知保全が優位ですが、初期投資がかかるぶん、すべての設備に入れるのは現実的ではありません。だからこそ「どの設備に入れるか」が本題になります。

予知保全の仕組みは?センサー・IoT・AI異常検知の流れ

予知保全は、次の4段の流れで動きます。

  1. 測る(センサー):振動・温度・電流・回転数・音などを設備から取得する
  2. 集める(IoT):取得したデータをネットワークで収集し、時系列で蓄積する
  3. 見つける(AI):正常時のパターンと比べ、逸脱(異常の予兆)を検知する
  4. つなげる(保全):アラートを保全計画に落とし込み、計画停止・部品手配を行う

AIの実装方式は、扱えるデータによって主に3つに分かれます。

手法1

異常検知

正常状態からのズレを検出

  • 必要データ正常データ中心
  • 強み故障データが少なくても始められる
手法2

残存寿命予測 (RUL)

あと何時間で故障するかを予測

  • 必要データ過去の故障履歴が必要
  • 強み計画停止を立てやすい
手法3

物理モデル + AI

設備の物理特性とデータを併用

  • 必要データ物理特性 + 運転データ
  • 強み精度が高く根拠を説明しやすい

異常検知の中核はAIの機械学習です。基礎は機械学習とは、製造業での使いどころは製造業のAI・機械学習ガイドで整理しています。

CBM(状態基準保全)と予知保全の関係

現場では予知保全とあわせてCBM(Condition Based Maintenance、状態基準保全)という言葉もよく出てきます。CBMは「設備の状態を見て整備を決める」考え方の総称です。予知保全は、そのCBMをセンサーとAIで高度化し、「今の状態」だけでなく「この先いつ壊れそうか」という将来予測まで踏み込ませたものだと捉えると整理がつきます。つまりCBMが土台、予知保全はその発展形という関係です。用語の系統は状態基準保全(CBM)の解説(富士電機)なども参考になります。

予知保全のメリットと課題は?

メリットは主に4点です。

  • 突発停止の削減:予兆の段階で気づけるため、ライン全体を巻き込む計画外停止を減らせます。停止の影響度は稼働率(OEE)の考え方と直結します。
  • 過剰整備の削減:まだ使える部品を周期で替える無駄が減ります。
  • 在庫の圧縮:交換時期が読めるため、予備部品を過剰に抱えずに済みます。
  • 技能の平準化:ベテランの「そろそろ危ない」という勘を、データと判定に置き換えていけます。

一方で課題も明確です。導入現場で繰り返しつまずくのは、技術そのものより手前の3点です。

第一にデータ品質。センサーは付けたのに、欠損が多い・サンプリング間隔が粗い・タイムスタンプがずれている、という状態では学習が成り立ちません。「データを取っている」ことと「使えるデータがある」ことは別物です。

第二に故障事例の不足。過去の故障データが数件しかない設備では、いきなり寿命予測を作っても精度が安定しません。正常データだけで学習できる異常検知から始め、故障データがたまってから予測へ進む順序が無理のない道筋です。

第三に運用設計の欠如。モデルができても、誰がアラートを見て、誰が判断し、誰が止めるのかが決まっていないと、現場は動けません。予知保全の成否は技術以上に運用設計に依存する、というのが支援の現場で繰り返し見えてきた構造です。

どの設備から始めるべきか?「当てどころ」で効果が決まる

ここが、他ではあまり語られない核心です。予知保全は、入れれば必ず効くわけではありません。効くかどうかは「どの設備に当てるか」で決まります。

工場全体のスループットは、一番能力の低い工程(ボトルネック)で決まります。余力のある工程がどれだけ安定して回っても、全体の産出量は変わりません。予知保全も同じで、めったに止まらない設備や、止まっても迂回できる設備にセンサーとAIを入れても、経営数字は動きません。動くのは初期費用と運用費だけ、という状態になります。

だから最初に当てるべきは、止まると全体が止まる設備です。具体的には次の2条件で絞ります。

  • 停止コストが大きい:止まるとライン全体・受注全体に波及する
  • 故障頻度が読みにくい:突発で止まりやすく、事後保全では被害が大きい

全設備に一斉展開ではなく、この条件に当てはまる1〜3台から始める。これが中小規模でも現実的で、かつ効果が数字に出やすい入り方です。

もう一つ、着手前に確認したいのが「そもそもAIが要る問題か」です。停止の多くが段取りミスや点検漏れといった業務フローの問題なら、フローを直すほうが先です。予知保全の導入そのものが目的化すると、筋の悪い投資になります。まず確認したいのは「これはAI以前の話ではないか」で、そのうえで本当に必要な設備にだけ当てるのが、投資を無駄にしない順番です。

予知保全はどう導入する?6ステップと「データが9割」

導入は次の6ステップで進みます。全設備を一気にではなく、絞った設備でスモールスタートするのが定石です。

1
Step 1

重要設備の選定

止まると全体が止まる1〜3台

2
Step 2

センサー設置

振動・温度・電流など。後付けで可

3
Step 3

データ収集

半年〜1年の蓄積が目安

4
Step 4

モデル開発

まず異常検知から

5
Step 5

PoC

既存保全と並行し精度を評価

6
Step 6

本番運用

アラート → 計画停止のフロー化

この6ステップで見落とされがちなのが、Step 3のデータ収集です。予知保全というとAIの精度に目が向きますが、成果を左右するのは手前のデータです。プロンプトやアルゴリズムの工夫より、どれだけ質の良いデータをためられるかで結果が決まります。センサーを付けてから使えるデータが半年〜1年たまるまでは、AIは本領を発揮できません。「AI導入」ではなく「データ収集の開始」から逆算してスケジュールを引くのが実務的です。

もう一点、運用で効いてくるのが説明可能性です。現場でラインを止める判断は重く、「AIが止めろと言ったから」だけでは通りません。「どのセンサーの、どの変化を根拠に予兆と判定したか」を示せて初めて、保全担当も生産現場も納得して手を動かせます。精度の高さだけでなく、根拠を説明できるかを運用設計に組み込んでおくことが、現場に定着するかどうかを分けます。物理モデル併用型が中堅以上で選ばれやすいのも、根拠を示しやすいことが理由の一つです。

導入判断の材料としては、計画外停止の削減、予備部品在庫の圧縮、過剰整備の削減、設備起因の不良削減、といった効果を金額に置き換えて積み上げます。段階的な設備投資は、経済産業省「Connected Industries」の政策的枠組みでも後押しされています。

なお、設備の故障対応がベテランの経験に頼りきりで継承が難しいという課題に対し、熟練者の判断知識をAIでデータ化・構造化し、若手がいつでも参照できる会社の資産に変えた支援事例があります。予知保全のセンサーデータと、こうした暗黙知のデータ化は、どちらも「現場の判断を残す」という同じ方向を向いた取り組みです。

よくある質問

Q1. 予知保全と予防保全はどちらを選ぶべきですか

二者択一ではありません。止まると全体が止まる重要設備には予知保全、影響の小さい設備には予防保全や事後保全、と設備ごとに使い分けるのが基本です。全設備を予知保全にするのはコスト面で現実的ではありません。

Q2. センサーの費用はどのくらいかかりますか

振動センサーは数万〜数十万円、温度・電流センサーは数千円台からが一般的な目安です。既存設備に後付けできるものも多く、設備更新を待たずに始められます。実額は設備と測定項目で変わります。

Q3. 故障のデータがほとんどありませんが始められますか

始められます。正常時のデータだけで学習できる異常検知から入るのが現実解です。故障データがたまってから、残存寿命予測(RUL)や物理モデル併用型へ広げていく順序が安全です。

Q4. AIが誤検知したらかえって混乱しませんか

だからこそ、いきなり本番でラインを止めるのではなく、既存の保全と並行して精度を確かめるPoC期間(Step 5)を置きます。判定の根拠を示せる設計にしておくと、誤検知の切り分けも早くなります。

Q5. 異常検知と異常診断はどう違いますか

検知は「異常の予兆がある」と知らせる機能、診断は「原因は◯◯だ」と特定する機能です。診断は設備固有の知識が必要で難易度が上がります。まずは検知から始めれば十分です。

Q6. クラウドとオンプレミスのどちらがよいですか

データ量とセキュリティ要件で決めます。機密性の高い重要工程はオンプレミス、それ以外はクラウド、というハイブリッドが現実的な落としどころになります。

Q7. 効果はどのくらいの期間で判断すればよいですか

短期で結論を出さず、四季を通した稼働を見られる1年スパンで評価するのが無理のない目安です。季節で負荷や環境が変わる設備ほど、通年で見ないと精度も効果も正しく測れません。

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予知保全は、技術の巧拙より「どの設備に当て、どうデータをためるか」で成否が分かれます。自社の「止まると困る設備」を1〜3台書き出すところから始めれば、着手の見通しは立ちます。

Delight Flowは、製造現場のAI活用に専門特化した東大発のスタートアップです。「どの設備から当てるべきか」「データ収集の体制をどう整えるか」を自社の状況に当てはめて考えたい方には、初回相談(無料)でお話を伺います。ご相談はこちら

代表取締役 村田 凌

執筆者

村田 凌

株式会社Delight Flow 代表取締役CEO

外資系コンサルティングファームにて金融会社のサイバーセキュリティ戦略構築支援に従事した後、東京大学にてAIの研究に取り組む。現在は工学系研究科博士課程に在籍。国際論文誌、学会誌での受賞歴を持つ。

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