予防保全とは|事後・予知保全との違いと進め方を保全担当向けに整理
予防保全とは|事後・予知保全との違いと進め方を保全担当向けに整理
予防保全とは|事後・予知保全との違いと進め方を保全担当向けに整理
この記事の要点
- 予防保全とは、設備が故障する前に計画的に点検・部品交換を行う保全方式で、故障してから直す事後保全、状態データから故障時期を予測する予知保全と区別されます。
- 予防保全は時間を基準にするTBMと、状態を基準にするCBMに分かれ、CBMが予知保全の入口になります。
- すべての設備を予防保全にすると過剰保全でコストが膨らみます。設備の重要度で使い分けるのが出発点です。
- 中小製造業はExcelと継続記録で保全計画を回せます。この記事で計画の立て方と過剰保全の見抜き方まで確認できます。
保全方式の言葉は近い意味で混ざりがちで、社内でも人によって指すものが違うことがあります。この記事では、予防保全の定義を他方式との違いから固め、自社設備でどう使い分け、どう計画に落とすかまでを保全担当・生産技術の視点で整理します。
予防保全とは?事後保全・予知保全と何が違うのか
予防保全とは、設備が故障する前に、あらかじめ決めた計画にもとづいて点検・清掃・給油・部品交換を行う保全方式です。故障による突発停止を減らし、設備を安定して動かすことを目的とします。英語のPreventive Maintenanceから、現場ではPMとも呼ばれます。
対比される方式が事後保全と予知保全です。事後保全(Breakdown Maintenance、BM)は、設備が壊れてから修理・交換する方式で、計画にかかる手間が少ない一方、故障のタイミングを選べません。予知保全(Predictive Maintenance)は、センサーで集めた状態データから故障の兆候をとらえ、故障が起きる前に手を打つ方式です。予防保全が「時期を決めて備える」のに対し、予知保全は「兆候を見て備える」点が違いになります。
3方式の位置づけを整理します。
| 観点 | 事後保全(BM) | 予防保全(PM) | 予知保全(PdM) |
|---|---|---|---|
| 対応のきっかけ | 故障の発生 | あらかじめ決めた時期・状態 | データが示す故障の兆候 |
| ねらい | 壊れたら早く直す | 故障を未然に防ぐ | ムダな整備も故障も減らす |
| 主なコスト | 突発停止・緊急修理 | 点検・交換の計画コスト | センサー・分析の初期投資 |
| 過剰整備 | 起きない | 起きやすい | 抑えやすい |
| 向く設備 | 予備がある・停止影響が小さい | 標準的な設備全般 | 停止影響が大きい重要設備 |
3方式は優劣ではなく、設備ごとの使い分けが前提です。予防保全と予知保全の違いをさらに詳しく比べる場合は予知保全とはを、事後・予防・予知を含む保全全体の基礎は保全の基本で整理しています。
予防保全のメリットとデメリットは?
予防保全のメリットは、故障の発生を計画的に抑えられる点にあります。突発停止が減ればラインの計画が立てやすくなり、緊急修理や特急部品手配といった割高な出費も減らせます。点検を通じて設備の劣化に早く気づける効果もあります。
一方でデメリットもあります。最大の論点が過剰保全です。まだ使える部品を時期が来たからと交換したり、異常の出ない設備に手厚い点検を繰り返したりすると、部品費・工数・在庫が積み上がります。予防保全は「やればやるほど安心」に見えて、コストが読者の想定以上に膨らみやすい方式でもあります。この過剰保全をどう抑えるかは後半で扱います。
TBMとCBM、時間基準と状態基準はどう使い分けるのか
予防保全は、何をきっかけに手を打つかで2つに分かれます。
- TBM(Time-Based Maintenance/時間基準保全):稼働時間や暦で区切り、「3か月ごとに点検」「1年ごとにオーバーホール」のように時期で整備します。計画が立てやすく、担当が代わっても運用しやすい反面、設備の実際の状態を見ないため過剰保全になりやすい面があります。
- CBM(Condition-Based Maintenance/状態基準保全):振動・温度・電流などの状態量を見て、閾値を超えたら整備します。状態に応じて手を打つため過剰保全を抑えやすい一方、どの値でどう判断するかの基準づくりと計測の手間が必要です。
まずTBMで計画保全の型をつくり、故障影響の大きい重要設備からCBMへ段階的に切り替えるのが現実的な順序です。CBMは状態データを扱う分、予知保全の入口にあたります。
予防保全の進め方は?保全計画の立て方5ステップ
予防保全は、次の順序で保全計画に落とすと動き出します。
設備の棚卸し
対象設備を一覧化しマスタを作る
重要度の仕分け
止まると困る順に重要・標準・非重要へ
保全周期の設定
メーカー推奨を基準に過去実績で調整
年間・月次計画化
点検項目と周期をカレンダーに割り付け
実績記録と見直し
実施記録を残し翌年の周期へ反映
設備の棚卸し
対象設備を一覧化しマスタを作る
重要度の仕分け
止まると困る順に重要・標準・非重要へ
保全周期の設定
メーカー推奨を基準に過去実績で調整
年間・月次計画化
点検項目と周期をカレンダーに割り付け
実績記録と見直し
実施記録を残し翌年の周期へ反映
Step 2の重要度の仕分けが計画全体の効き目を左右します。止まると生産に直結する設備、代替のきかない設備を上位に置き、そこから手厚くします。
中小製造業では、専用システムがなくてもExcelで十分に回せます。1行=1設備で、設備名・点検項目・周期・前回実施日・次回予定日・実施者・備考の7項目があれば、計画・予定・実績を1枚で管理できます。凝った仕組みより、担当が代わっても続く記録を切らさないことが要です。設備1台ごとの点検・技能の考え方は機械保全の基礎と技能継承で補足しています。
保全の効き目を測る指標(KPI)としては、次のようなものを設定します。数値目標は業界や設備で変わるため、まず自社の現状値を測り、そこから改善幅を決める目安として扱います。
- 計画達成率(計画した保全を予定どおり実施できた割合)
- 計画外の故障・突発停止の件数(月次推移で追う)
- 設備1台あたりの保全コスト
- MTBF(平均故障間隔)/MTTR(平均修理時間)
稼働率など生産側の指標とあわせて見る場合はOEE(設備総合効率)と稼働率を参照してください。
すべての設備に予防保全は必要か?過剰保全のムダを見抜く
予防保全を広げるほど安心に近づくように見えて、実際には「すべて予防保全」は過剰投資に傾きます。ここが保全コストの分かれ目です。全体のコストを決めるのは、手をかけた設備の数ではなく、止まると全体が止まる設備に手が届いているかどうかです。停止しても影響の小さい設備を手厚く整備しても、生産量は変わらず費用だけが積み上がります。
そこで、限られた工数と予算は重要設備に寄せ、影響の小さい設備は事後保全やTBMの軽い周期に留める、という当てどころの設計が効きます。過剰保全の兆候は、記録から次の3点で見抜けます。
- 交換した部品の摩耗状態:外した部品がほぼ新品なら、交換周期が短すぎます。周期を延ばす判断材料になります。
- 点検での異常検出率:長く点検して異常がほとんど出ない設備は、点検頻度を下げる候補です。
- 予備部品の使用実績:数年動きのない在庫は、保有量を見直せます。
これらは「勘で減らす」のではなく、記録にもとづいて周期を延ばしたり在庫を絞ったりする根拠になります。予防保全の記録を続けること自体が、過剰保全を削るためのデータになります。事後・予防・予知をどの設備にどう割り当てるかの全体設計は製造業の設備保全をAIで考えるにまとめています。
予防保全から予知保全へ、どう段階を踏むか
予知保全やAI活用は、予防保全を飛ばして始めるものではありません。予防保全の記録が土台になって初めて、状態監視や予測が意味を持ちます。段階は4フェーズで捉えると進めやすくなります。
紙・属人の保全
- 状態点検が記録に残らない
- 次の一歩記録の様式を決める
Excel計画+KPI
- 状態計画・実績・指標が見える
- 次の一歩重要設備を絞り込む
重要設備の状態監視(CBM)
- 状態振動・温度などを計測
- 次の一歩閾値と判断基準を作る
AI予知保全
- 状態データから兆候を予測
- 次の一歩重要設備から小さく検証
AIやIoTは、Phase 2までで整った記録の上に乗せると効きます。具体的には、状態データで点検の精度を上げる、過去の保全記録から劣化しやすい部品の傾向を読む、といった使い方です。ここでも当てどころは重要設備です。停止影響の小さい設備にセンサーや分析を先に入れても、コストが先行して回収が遠のきます。AI予知保全の始め方と、実証で失敗しやすい点は予知保全とはで扱っています。
よくある質問
Q1. 予防保全とTBM・CBMの関係は?
予防保全が上位の考え方で、その中に時間基準のTBMと状態基準のCBMが含まれます。事後保全は「予防しない」方式なので予防保全には含まれず、予知保全はCBMの延長線上にある別方式として区別します。
Q2. 予防保全と予知保全は何が違いますか?
予防保全は「あらかじめ決めた時期・状態」で手を打ちます。予知保全は「データが示す故障の兆候」で手を打ちます。予知保全のほうが過剰整備を抑えやすい一方、センサーと分析の初期投資が必要です。導入は予防保全の記録が整った後が現実的です。
Q3. メーカーの推奨周期はそのまま守るべきですか?
まずは推奨周期を基準にします。そのうえで、外した部品がほぼ新品、点検で異常が出ない、といった記録が積み上がれば、周期を延ばす判断ができます。周期の見直しは、勘ではなく記録を根拠にします。
Q4. 中小製造業でも予防保全は始められますか?
始められます。専用システムがなくても、設備名・点検項目・周期・前回実施日・次回予定日・実施者・備考の7項目のExcelで計画・予定・実績を管理できます。重要なのは記録を切らさないことです。
Q5. すべての設備を予防保全にすべきですか?
すべてを予防保全にすると過剰保全でコストが膨らみます。止まると生産に直結する重要設備に予防保全を寄せ、影響の小さい設備は事後保全や軽い周期に留めるのが基本です。設備の重要度で使い分けます。
Q6. 予防保全で見るべきKPIは?
計画達成率、計画外の故障・突発停止件数、設備1台あたりの保全コスト、MTBF(平均故障間隔)やMTTR(平均修理時間)が基本です。数値目標は自社の現状値を測ってから、改善幅の目安として設定します。
関連記事
- 製造業の設備保全をAIで考える(このテーマのまとめ)
- 保全の基本|事後・予防・予知とTPMの現場運用
- 予知保全とは|予防保全との違いとPoC失敗回避の実装
- 機械保全の基礎と技能継承
- OEE(設備総合効率)と稼働率
自社の設備でどこまでを予防保全にし、どこから予知保全やAIを検討するかは、設備の重要度と記録の状態しだいで変わります。当てどころの整理が難しい部分があれば、Delight Flowが初回相談(無料)でお話を伺います。ご相談ください。

執筆者
村田 凌
株式会社Delight Flow 代表取締役CEO
外資系コンサルティングファームにて金融会社のサイバーセキュリティ戦略構築支援に従事した後、東京大学にてAIの研究に取り組む。現在は工学系研究科博士課程に在籍。国際論文誌、学会誌での受賞歴を持つ。
会社情報を見る記事の内容を、現場で「使える力」にしませんか
製造業特化のAI研修で、現場のAI活用を前に進める
貴社の実務を題材にしたオーダーメイド研修。助成金の活用もご相談いただけます。対面・オンライン対応、少人数から。
製造業特化AI研修を見る