予防保全と事後保全の使い分け|Excelで始める中小製造業の運用
予防保全と事後保全の使い分け|Excelで始める中小製造業の運用
この記事を読むとわかること
予防保全は定期点検・計画交換、事後保全は故障してから対応する戦略で、設備の重要度で使い分けます。中小製造業はExcel管理+継続記録で十分回せます。過剰整備のムダを見抜く3つの指標と、予知保全への4段階移行ロードマップを把握できれば、保全コスト最適化の道筋が見えてきます。
予防保全と事後保全の使い分け
製造業の保全戦略の基本2形態を整理します。
壊れたら直す
- メリット計画コスト低
- デメリット故障時のロス大
- 向き予備設備・非重要
計画的に整備
- メリット故障削減
- デメリット過剰整備のリスク
- 向き標準設備全般
事後保全を選ぶ判断基準としては、故障してもすぐ代替可能であること、故障してもライン停止に直結しないこと、修理コストが計画保全コストより低いこと、部品が即調達可能であること、といった条件が挙げられます。具体例としては補助設備、予備品、簡易工具などが該当します。
「すべて予防保全」は過剰投資になりがちで、「すべて事後保全」は計画外停止のリスクが大きすぎます。設備ごとに使い分ける設計が、コスト最適化の前提です。
TBMとCBM、時間ベースと状態ベース
予防保全はさらに2つに分かれます。Time-Based Maintenance(TBM)は時間ベースの定期保全で、「3ヶ月ごとに点検」「年1回オーバーホール」といった形を取ります。計画立案が容易な点がメリットですが、過剰整備の可能性というデメリットがあります。Condition-Based Maintenance(CBM)は状態ベースで、「振動値が閾値を超えたら点検」といった運用です。ムダの少ない整備が可能な点がメリットですが、状態判定の難しさがデメリットとなります。
CBMは予知保全の前段階とも言える概念です。TBMからCBMに移行することで過剰整備を削減し、その先にAI予知保全への展開が見えてきます。
Excelで始める予防保全運用
予防保全計画を5ステップで整理します。
設備リスト化
全設備のマスタ整備
重要度分類
重要・標準・非重要
保全周期決定
メーカー推奨 + 過去実績
計画作成
年間・月次計画
実績記録
実施記録 → 翌年の計画へフィードバック
設備リスト化
全設備のマスタ整備
重要度分類
重要・標準・非重要
保全周期決定
メーカー推奨 + 過去実績
計画作成
年間・月次計画
実績記録
実施記録 → 翌年の計画へフィードバック
中小製造業ではExcel管理で十分です。重要なのは継続記録です。設備・点検項目・周期・前回実施日・次回予定日・実施者・備考の7項目があれば、Excel運用で実務目的は達成できます。シンプルな仕組みを継続することが、何よりも重要です。
過剰整備のムダを見抜く
予防保全で陥りやすいのが過剰整備です。健全な部品まで定期交換してしまったり、不要な点検作業を繰り返したり、過剰な予備部品在庫を抱えたりといった状況が典型です。経済産業省「2025年版 ものづくり白書」でも、保全コストの最適化が課題として議論されています。
過剰整備の見抜き方として3つの指標を提示します。第一に交換した部品の摩耗状態を記録し、ほぼ新品なら交換周期を長くできるという判断ができます。第二に点検記録で異常がほとんどない設備は、点検頻度の見直しが可能です。第三に過去5年で1度も故障していない部品は、在庫圧縮が可能になります。
予防保全のKPIとしては、計画達成率(95%以上が目標)、計画外故障件数(削減目標)、保全コスト/設備(業界比較)、MTBF延長率(年率5%以上)といった指標があります。日本機械学会論文集等で、保全KPIの議論が継続されています。
予知保全への4段階移行
予防保全から予知保全への段階移行は、4つのフェーズで進めます。Phase 1は紙の予防保全計画、Phase 2はExcel管理+KPI、Phase 3は重要設備の状態監視(CBM)、Phase 4はAI予知保全、という順序です。
AI/IoTで予防保全を強化する具体例としては、センサーデータで定期点検の精度を向上させること、過去データから「次に故障しそうな部品」を予測すること、保全記録のNLP分析で改善点を抽出することなどが考えられます。これにより過剰整備が削減でき、予防保全のコスト効率が大きく改善します。詳細は予知保全とはを参照してください。
よくある質問
Q1. 予防保全とTBM/CBMの関係は
予防保全は包括概念で、その中にTBM(時間ベース)とCBM(状態ベース)が含まれます。CBMが予知保全に近い概念です。
Q2. メーカー推奨周期は守るべきか
基本は守ります。ただし長年の運転データで「もっと長くて大丈夫」とわかれば見直し可能です。記録蓄積が前提となります。
Q3. 中小製造業の予防保全Excelテンプレは
設備・点検項目・周期・前回実施日・次回予定日・実施者・備考の7項目で十分です。シンプルでよく、重要なのは継続記録です。
主な引用元
経済産業省「2025年版ものづくり白書」、日本機械学会論文集A編(J-STAGE)。
Delight Flowでは、予防保全のExcel運用支援、予知保全への段階移行を伴走します。無料診断実施中です。お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。

執筆者
村田 凌
株式会社Delight Flow 代表取締役CEO
外資系コンサルティングファームにて金融会社のサイバーセキュリティ戦略構築支援に従事した後、東京大学にてAIの研究に取り組む。現在は工学系研究科博士課程に在籍。国際論文誌、学会誌での受賞歴を多数持つ。
会社情報を見る記事の内容について、もっと詳しく聞きたい方へ
AI活用の「最初の一歩」を一緒に考えませんか
月10万円から始められる伴走型のAI顧問サービスです。最低契約期間なし。まずは月1回の壁打ちから。
無料相談・お問い合わせ