Delight Flow
お役立ち情報一覧に戻る
導入実践

在庫管理の効率化|中小製造業がシステム導入前にやる軽量な進め方

導入・進め方

在庫管理の効率化|中小製造業がシステム導入前にやる軽量な進め方

Delight Flow
<!-- 想定ニーズ(ジョブ): 在庫過多と欠品が同時に起きる中小製造業の担当者が、システムを買う前に自社で効率化を進める順番と具体的な計算方法を知りたい 満たし方: 4領域への分解・ABCでの当てどころ・発注点/安全在庫の計算式・見える化の順番を、Excel中心の軽量実装として提示。読後に「どこから、どう手をつけるか」が判断できる 促すアクション: まず現物と帳簿を合わせ、Aランク品目から発注ルールを作る。難所は初回相談で整理 -->

在庫管理の効率化|中小製造業がシステム導入前にやる軽量な進め方

この記事でわかること

  • 在庫管理を効率化する順番は、見える化 → ルール化 → 自動化。システム導入はその後
  • 全品目を同じに扱わず、ABC分析で「動きの多いAランク」から手をつける
  • 発注点と安全在庫は勘ではなく計算式で決められる(本文に式を掲載)
  • 需要予測にAIが要るのは一部の品目だけ。多くはExcelの関数で足りる

在庫が過剰なのに、いざ使う品番だけ欠品する。発注のタイミングは担当者の頭の中にあり、その人が休むと止まる。棚卸のたびに帳簿と現物が合わない。こうした状態に対して、生産管理システムや基幹システムの刷新を検討する中小製造業は多くあります。

まず確認したいのは、**「その在庫、帳簿と現物が合っているか」**です。合っていないままシステムを入れても、扱うデータが不正確なので同じ問題が形を変えて残ります。この記事では、システムを買う前に自社でできる効率化を、Excelと少しの自動化を中心とした軽量な進め方として整理します。

なぜ在庫管理は効率化しにくいのか

中小製造業で繰り返し起きる在庫の悩みは、おおむね次に集約されます。

  • 過剰在庫と欠品が同時に起きる(在庫の「量」ではなく「配分」の問題)
  • 発注のタイミングと数量が担当者の勘に依存し、属人化している
  • 棚卸のたびに帳簿在庫と実在庫が合わない
  • 季節変動や特需への対応が後手に回る
  • 発注担当が辞めるとロジックがブラックボックス化する

これらが解けにくいのは、在庫が単なる「モノの数」ではなく、寝ているキャッシュだからです。仕入れて倉庫に置いた時点で、その分の資金は製品が売れるまで動きません。過剰在庫は資金繰りを圧迫し、欠品は受注機会を逃す。在庫は、現場のどの工程よりも先に会社の資金を詰まらせる場所になり得ます。だからこそ、限られた手間をどの品目にかけるかという配分の設計が、効率化の成否を分けます。

なお、発注量や安全在庫を「いくつにするか」は、本質的には条件が決まれば答えが定まるルールの問題です。生成AIのような確率的に揺れる道具より、決まった計算式で処理するほうが向いています(この線引きはルールベースが効く場面で整理しています)。

在庫管理の効率化は、どこから手をつければいいのか

在庫業務は1つの塊ではなく、性質の異なる4つの領域に分けられます。難易度と実装手段が違うため、分けて考えると着手の順番が見えます。

領域1

在庫の見える化

現物と帳簿を合わせ、今いくつあるかを正確にする

  • 難易度低(運用+Excel)
  • 位置づけすべての前提
領域2

発注点・発注量

いつ・いくつ発注するかを計算式で決める

  • 難易度中(数式・統計)
  • 実装Excel関数
領域3

需要予測

将来の必要量を見積もる

  • 難易度中〜高
  • 実装統計関数 or AI
領域4

運用と自動化

アラート・発注リストを回す仕組み

  • 難易度低〜中
  • 実装GAS等の軽量自動化

このうち領域1・2・4はAIを使わずExcelと運用設計で実装できます。AIの出番は領域3の一部だけです。

まず「動きの多い品目」から――ABC分析で当てどころを絞る

すべての品目に同じ手間をかけると、労力が分散して続きません。ここで使うのがABC分析です。品目を出庫金額や出庫頻度で並べ、上位から累積で分類します。一般的な区分の目安は次のとおりです。

ランク目安管理の考え方
A累積で上位約7〜8割を占める少数の品目発注点・安全在庫を厳密に計算し、こまめに見直す
B中位定期発注、または在庫が減ったタイミングで発注
C残りの多数だが金額・頻度は小さい大まかなルールで在庫を持ち、切れてから発注でも可

累積構成比を折れ線で描いたパレート図にすると、どこまでがAかを目で判断できます。Aランクは種類こそ少なくても、在庫金額と欠品リスクの大半を占めます。資金と欠品の当てどころは、この動きの多いAから広げるのが順当です。CランクをExcelで精緻に管理しても、効果は小さいわりに手間だけ増えます。

在庫の見える化――現物と帳簿を合わせるには

効率化の土台は、今この品番が実際にいくつあるかを正確に把握できていることです。ここがずれていると、後述の発注計算も需要予測も、間違った数字の上で動きます。

見える化で押さえる点は3つです。

  • 棚卸の頻度をランクで変える:全品を一斉に数えるのは負担が大きいため、Aランクは短い周期、Cランクは長い周期といった循環棚卸にする
  • 保管場所(ロケーション)を決める:「どの棚にあるか」が決まっていないと、探す時間と数え間違いが増える
  • 入出庫を記録に落とす:紙とExcelの二重管理や、まとめて後入力は差異の温床になる

入出庫の記録は、バーコードや2次元コードで軽くできます。バーコードリーダーは仕組みとしてはキーボード入力と同じで、読み取った値がそのままセルに入ります。Excelに関数やマクロを組み込めば、入庫・出庫・棚卸の際に読み取るだけで在庫数が更新される運用も作れます。専用システムを買わずに始められる範囲です。

ここで強調したいのは、この見える化はAIの手前の話だということです。帳簿と現物が合っていない状態でAIによる需要予測を導入しても、学習させるデータ自体がずれているため筋のいい結果になりません。在庫の効率化でAIを検討する前に、まず現物と帳簿を合わせる。順番はここから動きません。

発注点と安全在庫はどう計算するのか

「いつ発注するか」は発注点、「欠品に備えていくつ余分に持つか」は安全在庫で決まります。いずれも勘ではなく計算できます。

発注点(在庫がこの数を切ったら発注する、というライン)の一般的な式は次のとおりです。

発注点 = 1日あたり平均使用量 × 調達リードタイム(日) + 安全在庫

安全在庫は、需要のばらつきに備えるバッファです。統計的な一般式は次で表されます。

安全在庫 = 安全係数 × 使用量の標準偏差 × √(発注リードタイム + 発注間隔)
  • 安全係数:どこまで欠品を許容するかで決まる値。欠品許容率5%(100回のうち5回までの欠品を許容)なら安全係数は約1.65、1%なら約2.33。正規分布のZ値に対応する標準的な数値です
  • 使用量の標準偏差:過去の出荷実績のばらつき。需要が安定している品目ほど小さくなります
  • リードタイム・発注間隔が長いほど、備える期間が延びるため安全在庫は増えます

発注量そのものは、発注1回あたりのコストと在庫を持ち続けるコストが釣り合う量として**経済的発注量(EOQ)**の考え方があります。ただし中小製造業では、最小発注ロットや荷姿の制約が先に効くことが多く、EOQは目安として使い、実際は現実の発注単位に丸めるのが実務的です。

これらの計算はExcelの関数で完結します。式を作ること自体より難しいのは、過去データから妥当な係数(平均使用量・標準偏差・リードタイム)を決めることです。そして全品目に同じ式を当てず、Aランクは標準偏差まで見て厳密に、Cランクは「最低ラインを切ったら決まった数を発注」程度に簡略化する。ABCで精度を変えることで、手間と効果が釣り合います。

需要予測にAIは必要か

領域3の需要予測は、AIが検討に上がりやすい領域です。ただし、すべての品目にAIが要るわけではありません。

判断

その品目に、どれくらいのデータと変動要因があるか

ケースA

機械学習の検討余地あり

過去データが2年以上あり、季節・特需・天候など複数の要因が絡む

ケースB

Excelの統計関数で十分

データはあるが変動要因がシンプル。移動平均やTREND関数で足りる

ケースC

まずデータを貯める運用設計から

過去データが乏しい、または欠損が多い

複数の要因が絡み合う品目の予測は、人が式を組むより機械学習が向く場合があります。一方、定常的に出ていく品目は移動平均やExcelのFORECAST・TREND関数で十分な精度が出ます。ここでも順序があり、いきなり大規模な予測システムを入れるより、まず現状のデータで統計関数を試し、精度が頭打ちになった品目だけを深掘りするのが現実的です。データの質が伴わないままAIを載せても、予測は当たりません。

軽量実装で始めるとき、何を順番にやるのか

ここまでを実際に進める順番は、見える化 → ルール化 → 自動化の3段です。

1
Step 1

見える化とABC

現物と帳簿を合わせ、ABC分析でAランクを特定する

2
Step 2

ルール化

Aランクから発注点・安全在庫の式を整備し、係数を決める

3
Step 3

自動化

在庫が発注点を切ったら通知・発注リストを出す仕組みをGAS等で組む

自動化の一例として、在庫データを毎日集計し、発注点を下回った品目を抽出してメールやチャットに通知する仕組みがあります。GoogleスプレッドシートとGAS(Google Apps Script)で組めば、追加のツール費用をほとんどかけずに動きます。誤報を避けるため、「一時的に下回っただけでは通知せず、数日続いたら通知する」といった条件を入れておくと現場が疲れません。こうした社内向けの軽い作り込みの考え方はSaaSに頼らない内製ツールで扱っています。

Step 1とStep 2だけでも、発注の精度は大きく変わります。Step 3の自動化は仕上げです。

軽量実装のメリットと限界は

軽量実装は万能ではありません。向く範囲と向かない範囲を分けて選ぶための整理です。

観点メリット限界
コスト月額数百円〜0円で始められる大規模化すると保守の手間が増える
適合性自社の業務に合わせやすく、変更も即反映数百品目を超えると運用が破綻しやすい
データ自社内にデータを持てる設備・センサー連動など高度な連携には不向き
属人化小さく始めて拡張できる作った担当が辞けると保守が難しい
制度対応導入が軽い監査・トレーサビリティ要件が厳しい業界は認証済みシステムが要る

数十〜数百品目、数十人規模の中小製造業であれば、軽量実装でカバーできる範囲は広くあります。品目数と業務が拡大し、軽量実装の限界に触れ始めた段階で、はじめて生産管理システムの選び方を検討するのが、順序として無駄がありません。在庫は生産計画と表裏の関係にあるため、あわせて生産計画とは何かも土台の理解として役立ちます。

よくある質問(FAQ)

Q. 在庫管理の効率化は、何から始めればいいですか。 まず現物と帳簿を合わせる見える化からです。次にABC分析で動きの多いAランクを特定し、そのAランクから発注点と安全在庫のルールを作ります。システム導入の検討はその後で問題ありません。

Q. 発注点はどう計算しますか。 一般的には「1日あたり平均使用量 × 調達リードタイム + 安全在庫」で求めます。平均使用量とリードタイムは過去の実績から算出します。

Q. 安全在庫の安全係数はどう決めますか。 どこまで欠品を許容するかで決めます。欠品許容率5%なら安全係数は約1.65、1%なら約2.33が目安です。欠品が許されない重要品ほど係数を大きく取り、在庫を厚くします。

Q. Excelでの在庫管理には限界がありますか。 あります。目視での手入力はミスが起きやすく、品目数やファイル共有が増えると更新の遅れや二重管理が生じます。バーコード読み取りをExcelに組み込む、品目数が増えたらシステムを検討する、といった段階的な移行が現実的です。

Q. 需要予測にAIは必要ですか。 一部の品目だけです。過去データが2年以上あり、季節や特需など複数の要因が絡む品目では機械学習の余地があります。変動が小さい品目はExcelの統計関数で十分な精度が出ます。

Q. 在庫管理にバーコードは有効ですか。 入出庫と棚卸の記録を速く正確にする点で有効です。バーコードリーダーはキーボード入力と同じ仕組みで動くため、Excelに関数やマクロを組み込めば、専用システムなしでも読み取り運用を作れます。

Q. 過剰在庫と欠品が同時に起きるのはなぜですか。 在庫の「総量」ではなく「配分」がずれているためです。動きの遅い品目に資金と棚を取られ、動きの速い品目のバッファが不足している状態です。ABC分析で品目ごとに管理の強弱を変えると、この偏りが是正されます。


最後に

在庫管理の効率化は、高価なシステムを入れる前に、見える化・ルール化・軽量自動化でかなりの部分を進められます。順番は、現物と帳簿を合わせ、ABC分析でAランクを絞り、発注点と安全在庫を計算式に落とす。ここまでは月額数百円〜0円のExcel中心で着手できます。

私たちDelight Flowは、製造現場のAI活用に専門特化した東大発のスタートアップです。「自社の在庫業務のどこにどの手段が向くか」「AIを使うべき品目はどこか」を整理したい場合は、初回相談(無料)でお話を伺います。

製造AI顧問サービスを見るお問い合わせ

関連記事

代表取締役 村田 凌

執筆者

村田 凌

株式会社Delight Flow 代表取締役CEO

外資系コンサルティングファームにて金融会社のサイバーセキュリティ戦略構築支援に従事した後、東京大学にてAIの研究に取り組む。現在は工学系研究科博士課程に在籍。国際論文誌、学会誌での受賞歴を持つ。

会社情報を見る

記事の内容を、現場で「使える力」にしませんか

製造業特化のAI研修で、現場のAI活用を前に進める

貴社の実務を題材にしたオーダーメイド研修。助成金の活用もご相談いただけます。対面・オンライン対応、少人数から。

製造業特化AI研修を見る

あわせて読みたい

他の記事もぜひご覧ください