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段取り替え時間を削減する方法|SMEDと順序最適化の二段構え

導入・進め方

段取り替え時間を削減する方法|SMEDと順序最適化の二段構え

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<!-- 想定ニーズ(ジョブ): 段取り替えに時間を取られている現場の改善担当が、「何から手をつけ、どこまで削れるか」を判断したい。 満たし方: 内段取り/外段取りの分け方・SMEDの手順・削減の5ステップ・回数を減らす順序最適化までを一本の道筋で示し、自社の着手順を決められる状態にする。 促すアクション: まず自社の段取り時間を実測し、内外分類から着手する。順序最適化やAIは土台ができてから検討する。 -->

段取り替え時間を削減する方法|SMEDと順序最適化の二段構え

この記事でわかること

  • 段取り替えが多品種少量生産で大きなロスになる理由と、削減を考える2つの軸
  • 内段取りと外段取りの分け方(SMEDの核心)と、削減を進める5ステップ
  • シングル段取り・ワンタッチ段取り・ゼロ段取りの違い
  • 「1回を短くする」だけでなく「回数そのものを減らす」順序最適化という次の一手

段取り削減は、「1回の段取りを短くする」と「段取りの回数を減らす」という別々の軸で考えると、打ち手が整理できます。前者はSMED、後者は生産順序の組み替えの領域です。

段取り替えとは何か——なぜ多品種少量生産で効くのか

段取り替えとは、製造ラインで品種を切り替えるときの準備作業全般を指します。治具や金型の交換、材料の入れ替え、設備の調整、試作と初品確認といった作業がここに含まれます。「段取り八分、仕事二分」という言い回しがあるように、日本の現場では準備の巧拙が仕事の成否を分けるという考え方が古くから共有されてきました。

段取り替えの間、その設備は製品を作れません。つまり段取り時間は、そのまま設備が止まっている時間です。多品種少量生産では品種の切り替えが頻繁に起きるため、段取り替えが総稼働時間の3〜5割に達することもあるとされます(現場でよく語られる目安であり、実際の比率は品種数とロットサイズで大きく変わります)。1個や2個しか作らない品種のたびに長い段取りが入れば、実際に付加価値を生んでいる時間はごくわずかになります。これが、多品種少量生産ほど段取り削減の効果が大きい理由です。

削減を考えるうえで最初に押さえたいのは、「1回の段取りを短くする」ことと「段取りの発生回数を減らす」ことは別物だという点です。前者はSMEDの領域、後者は生産順序の組み替えの領域で、両者は独立に改善できます。この記事は、まず前者を固め、次に後者へ進むという順で整理します。

内段取りと外段取りをどう分けるか——SMEDの核心

SMED(Single Minute Exchange of Die/シングル段取り)は、段取り時間を10分未満、つまり分の位が1桁に収まる水準まで短縮することを目指す改善手法です。トヨタ生産方式の源流の一つとして知られ、新郷重夫氏らによって体系化されました。当初、数時間を要していた金型交換を大幅に短縮した取り組みが起点になっています。

SMEDの核心は、段取り作業を内段取りと外段取りに分けて考えることです。

内段取り

設備を止めないとできない作業

  • 金型交換・チャック取付・機上での調整
  • 性質この間は設備が止まる=生産できない
  • 方針できる限り外段取りへ振り替える
外段取り

設備を動かしながらできる作業

  • 次品の準備・治具の運搬・材料の段取り
  • 性質稼働時間に影響しない
  • 方針並行作業として前倒し・後ろ倒しする

改善の基本は、段取り作業をビデオ撮影などで洗い出し、一つずつ内段取りか外段取りかを分類したうえで、内段取りのうち外に振り替えられるものを外へ移し、残った内段取りをワンタッチ化・並行化・標準化で短くする、という流れです。この分離と振り替えだけでも、段取り時間は目に見えて縮みます。「設備を動かしながら、次の準備を先に済ませておく」という発想が、SMEDの本質です。

シングル段取り・ワンタッチ段取り・ゼロ段取りの違い

段取り短縮の到達度合いは、次のように段階で呼び分けられます。

呼称目安となる水準状態のイメージ
シングル段取り10分未満内段取りを外段取り化し、分の位が1桁に収まる
ワンタッチ段取り2分未満(100秒前後)ワンタッチ機構・治具の標準化で一動作に近づく
ゼロ段取り実質ゼロに近い段取り替えそのものを設計で不要にする(共通治具化・専用化など)

数字はあくまで目標水準の目安です。重要なのは、いきなりゼロを狙うのではなく、内外の分離という土台を作ったうえで、設備や治具の改造、工具の共通化へと段階的に踏み込む順序です。設計部門と協力して使う工具を共通化すれば、段取り作業そのものを減らせます。

段取り削減はどんな手順で進めるか

段取り削減の進め方を、着手しやすい順に5ステップで整理します。

1
Step 1

現状を実測する

段取り時間・頻度・パターンを実データで把握する

2
Step 2

内/外に分類する

全作業を内段取り・外段取り・ムダに仕分ける

3
Step 3

外段取り化する

内→外への振り替えと並行作業化を実施する

4
Step 4

残りを短縮する

ワンタッチ化・治具標準化・マニュアル化を進める

5
Step 5

順序を最適化する

生産順序を組み替え、段取り回数そのものを減らす

Step 1〜4がSMEDの領域、Step 5が次章で扱う順序最適化の領域です。多くの現場で見落とされがちなのがStep 1で、感覚では「だいたい30分」と思っていた段取りを実測すると、待ちや探しのムダを含めて倍近くかかっていた、というズレがよく見つかります。実測なしに改善効果は測れないため、まずは数回分をストップウォッチやビデオで記録するところから始めます。

Step 3の外段取り化は、設備投資をほとんど伴わずに効く一方で、作業者の意識改革を必要とします。「機械が止まってから準備を始める」習慣を、「機械が動いているうちに次を準備しておく」段取りへ変える必要があるためです。ここは進捗管理(工数管理工程管理)の仕組みと合わせて回すと定着しやすくなります。

SMEDの次は「回数を減らす」順序最適化

Step 4まで進めて1回あたりの段取りを短くしたら、次は段取りの発生回数そのものを減らすフェーズに入ります。これが生産順序の組み替え、いわゆる順序最適化の領域です。

考え方はシンプルです。たとえば製品A→B→C→A→Bの順で流すと段取りは4回発生しますが、A→A→B→B→Cの順にまとめれば段取りは2回で済みます。同種の品種を近くに寄せるほど切り替えは減ります。ただし、納期・優先度・在庫の制約があるため、単純にまとめれば良いわけではありません。段取り時間が「どの品種からどの品種へ切り替えるか」で変わる(順序依存の段取り)ことも多く、この問題はスケジューリングの一分野として広く研究されてきました。

回数削減の効果を、計算のイメージでつかんでおきます(以下は仕組みを示すための例で、実測値ではありません)。仮に1回30分の段取りが1日10回発生していれば、段取りロスは1日300分です。SMEDで1回15分に短縮できれば150分、さらに順序の組み替えで回数を10回から7回に減らせれば、15分×7回で105分まで下がります。1回を短くする改善と回数を減らす改善は、掛け算で効いてくるということです。

ここで、段取りを一段高い視点から捉え直しておきます。段取り替えが工場全体のスループットを縛るボトルネックになっているなら、そこを削ることは会社全体の産出量を直接押し上げます。逆に、段取りが詰まりの原因になっていない設備をいくら速くしても、全体の産出は変わりません。改善は「一番詰まっている工程」に当てて初めて経営数字が動くという見方は、リーン生産方式の制約理論とも一致します。段取り削減に着手する前に、その設備が本当に自社のボトルネックなのかを、設備総合効率(OEE)などで確かめておくと、労力の当てどころを外さずに済みます。

中小・多品種の現場での現実解

「順序最適化まで一気にやろう」と考えると、多くの中小製造業では壁に当たります。段取り時間のデータが取れていない、品種ごとの工程順序が標準化されていない、計画担当者が頭の中で順序を決めていて手順が可視化されていない——こうした状態では、順序を最適化するための入力データがそもそも揃わないためです。

現実的な順序は、Step 1〜4のSMED的な改善で土台を固め、段取り時間や工程順序のデータが貯まってきたところでStep 5の順序最適化へ進む、という段階的なアプローチです。Step 1〜4だけでも段取り時間は大きく縮むため、Step 5を焦る必要はありません。データも標準化もないまま高度な最適化ツールを導入すると、入力の質が低いまま「それらしい計画」が出てくるだけになりがちです。土台づくりが先、というのがここでの結論です。

段取り改善のどこにAIが効くか

順序最適化やデータ活用の文脈で、AIの出番を整理しておきます。段取り替えでAIが効きやすいのは、次のような場面です。

  • 段取り時間の予測:品種の組み合わせや過去実績から、次の段取りにかかる時間を見積もる
  • 順序の最適化:納期・優先度・段取り時間を同時に考慮し、段取り回数が少なくなる生産順序を計算する
  • 異常の検知:段取りが想定より長引いたときに、その要因の候補を洗い出す

ただし、AIはあくまで土台の上に乗る道具です。段取り時間のデータと工程順序の標準化がなければ、AIに与える入力が揃いません。そして、当てる先が自社のボトルネックでなければ、どれだけ精度の高い順序を計算しても全体の産出は変わりません。AIを検討するなら、「詰まっている工程はどこか」を先に見極め、そこに向けて使うのが順序です。この考え方は、製造業の生産計画AIの設計とも共通します。

よくある質問

Q1. 段取り替え削減の効果は何で測ればよいですか

段取り時間(1回あたり・1日合計)、段取り頻度(1日の回数)、段取り占有率(段取り時間 ÷ 総稼働時間)の3つを月次で追うのが基本です。改善前後で比較すれば、SMEDと順序最適化のどちらがどれだけ効いたかが切り分けられます。

Q2. 内段取りと外段取りは、どう見分ければよいですか

「その作業は、設備を止めないとできないか」で分けます。設備を止める必要がある作業が内段取り、動かしたままできる作業が外段取りです。判断に迷う作業は、いったん内段取りに置いて、外へ振り替えられないかを一つずつ検討します。

Q3. SMEDでもう限界です。次は何をすればよいですか

段取り回数そのものを減らす順序最適化が次の領域です。1回あたりを短くする改善が頭打ちでも、同種品種をまとめて切り替え回数を減らす余地はまだ残っていることが多くあります。段取り時間と工程順序のデータが揃っているなら、順序最適化のPoCを検討するタイミングです。

Q4. 段取り替えに3時間以上かかっています。それでもSMEDは効きますか

長い段取りほど、内段取りの中に外へ振り替えられる作業が紛れていることが多く、外段取り化の余地は大きくなりがちです。まずは数回分を実測し、作業を内外に分類するところから着手すると、削れる部分が見えてきます。

Q5. まず着手すべきなのは、どの設備ですか

段取りロスが大きい設備ではなく、**工場全体の産出を縛っている設備(ボトルネック)**から着手します。ボトルネックでない設備の段取りをいくら削っても、全体の生産量は増えません。どの設備が詰まりの原因かを、稼働率や仕掛かりの滞留から確かめるのが先です。

Q6. ゼロ段取りは、現実的に目指せる水準ですか

すべての段取りをゼロにするのは現実的ではありませんが、特定の品種群に絞れば、治具の共通化や設備の専用化で段取り替え自体を不要にできる場合があります。全設備で一律に目指すのではなく、切り替えが特に頻繁な品種の組み合わせから検討します。


段取り削減は、内段取りと外段取りを分けて1回あたりを短くするSMEDと、生産順序を組み替えて回数そのものを減らす順序最適化の、二段構えで考えると打ち手が整理できます。そして、労力を注ぐ前に「その設備は本当に自社のボトルネックか」を確かめることが、効果を空振りさせないための起点になります。

私たちDelight Flowは、製造現場のAI活用に専門特化した東大発のスタートアップです。段取り削減のどこから着手すべきか、順序最適化に進むデータが揃っているかといった整理でお困りの際は、初回相談(無料)でお話を伺います。ご相談ください

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代表取締役 村田 凌

執筆者

村田 凌

株式会社Delight Flow 代表取締役CEO

外資系コンサルティングファームにて金融会社のサイバーセキュリティ戦略構築支援に従事した後、東京大学にてAIの研究に取り組む。現在は工学系研究科博士課程に在籍。国際論文誌、学会誌での受賞歴を持つ。

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